デジャブ……と言うんだろうか、目の前にノイジちゃんがあおむけで倒れている。
あ、でも、体や気分は楽に……って言ってる場合じゃない!
「だ、大丈夫?!」と、ノイジちゃんの元へ駆け寄って揺さぶる。
「うーん、微妙だね」、そう答えたのはマスターだ。こっそり、どこかを指さしている。
静かにそのほうを向くと、少し成長したようなノイジちゃんの姿が。
「君の力を吸って分裂した、闇、いや病みノイジってとこかな」
「え?」
「楽になったでしょう?ノイジが君の陰の力を吸ったんだ。いや、吸ってしまった、かな」
「それって…」
「おっと、話はあとだ。あの子は結構好戦的なようだからね、ちょっと…本気で相手をしてくるよ」
と言って、マスターは上着を脱いで、病みノイジちゃん?の元へと向かった。
そのあとは、僕程度の語彙力じゃ表しきれないほどの、猛烈なバトルだった。
戸惑いは、やがて現実逃避になり、目が覚めた小さいほうのノイジちゃんと一緒に、○×ゲームなどをして遊んで時間をつぶした。
戦いが終わったのかな、と思ったのは、音がやんだから。どれほどの時間が経ったんだろう。でも、ここで時間はわからない。
だけど、僕も冷静になれた。
「いや~、疲れた疲れた」
「あ、ユウさ…うわっ!」
その姿を見て驚いた。出血していたり、明らかに折れていたり…この人、痛覚がないんだろうか?……いやまさかね。…でも、ここは不思議空間だからあり得るかも…。
「だ、大丈夫ですか?あと、もう一人のノイジちゃんは?!」
静かにユウさんが指をさしたその先には、病みノイジちゃんがあおむけで倒れていた。
「うわあ!デジャブ!」と、思わず叫んでしまった。
その声で起きたのか、スッと立ち上がり、ふらふらとしたような感じでどこかへ消えて行ってしまった。
「君の力で、ノイジの力は呪い歌になっていたようだけども…あれだと100万回連続で聞かなきゃ死なない歌、って感じまで力は落ちたから大丈夫だろうね」
「呪い歌……」
その単語に、何か聞き覚えがあり、僕はつい少し考え込んで、無言になってしまった。
「……まあ、大丈夫だよ。君の力も半覚醒する前まで戻ったし、君は何も気にしなくていい」
「え、でも…」
「…何かと疑問はあるだろうけど、今は答えられない。でも、僕の計画に身を任せてくれれば、君を、君や暁さんやノイジ、みんなみんな無事に暮らしていけるんだ」
「……じゃあせめて、これだけは答えてください。あなたの世界に、楓風はいますか?」
「……」
ふと、最後にテミィさんが言っていたあの言葉。その言葉の答えを口にした。
すると、ユウさんは驚いた顔で僕を見た後、優しく、だけど悲しそうに微笑んだ。
「……ノイジはこれからも分裂したままだろうけど、特に気にすることはないよ。力は弱ってるんだし」
「……話を、はぐらかさないでください。それとも、僕がすぐ忘れるからですか?」
「………君は、どこまで…」
驚いたあと、少し何かを考えているようなユウさん。少しの無言、先に声を出したのはユウさんだ。
「…正直な話、本当ノイジと戦って疲れたんだ。だからごめんね。また今度」
「ちょ、まってくださ」
「本当の姿で話そうね」
その言葉を最後に、ブツリと意識が途切れた。


ハッと目を覚ます。今日で何度目だろうか。いや、そもそも時間経過はどれだけなんだろうか。
などと考えをよぎっていると、目の前に姉さんがいた。
「なんや、嫌な夢でも見たんかいの?」
……あれ?なんでこれ、これもデジャブ?
ああ、そうだ。名前、答えを姉さんに言えば、きっとわかる。
僕と姉さんユウさんの名前…。
「…フーアーユー?」
「……」
無言、そのあとに姉さんは…。
優しく、だけど悲しそうに微笑んだ。